最近では固定インターネット回線以外にも、モバイルWiFiサービスが続々と登場しています。
従来のモバイルWiFiといえば、屋外でのインターネット環境を構築するための手段がメインでしたが、宅内でのネット環境構築を前提にしたサービスも登場してきています。
「置くだけWiFi」という名称でもおなじみのサービスですが、今回はそんな置くだけWiFiについてサービスの概要とメリット、デメリットなども詳しく紹介していきます。
この記事でわかること
置くだけWiFiとは?
置くだけWiFiとはその名の通り、自宅内で固定回線のようにして利用するWiFiサービスを総称するものです。大前提として「置くだけWiFi」という特定の商品名やサービス名ではないことを覚えておきましょう。
通常、光回線やADSLといった固定回線の多くは、電話回線や光ケーブルなど物理的な回線を宅内に引き込んで使用します。仮に自宅内に無線ルーターを設置していたとしても、大元の回線はあくまでも物理的に引き込んだ回線によって通信しているものです。
しかし、置くだけWiFiの場合は宅内にケーブルを引き込むのではなく、携帯電話用の無線ネットワークなどを受信して通信しています。電波を受信し、置くだけWiFiの端末からWiFiでデバイスまで通信しているため、完全に無線のみでの通信を可能にしています。
いわば通常のモバイルWiFiルーターを自宅内での利用を想定して作られたものといえます。
置くだけWiFiの特徴・メリット
置くだけWiFiにはどのようなメリットがあるのでしょうか。いくつかの特徴を紹介するとともに、メリットとして考えられるポイントを6つ挙げてみます。
ポイント
- 回線設置工事が不要
- 高速なインターネット回線
- 面倒な引っ越し手続きが不要
- 旅行先でも使える
- 料金が安い
- バッテリー切れの心配がない
1.回線設置工事が不要
まずは1つ目のメリットとして、物理的な回線を必要としないため、置くだけWiFiは回線設置工事が不要であることが挙げられます。光回線の場合、宅内に光ケーブルを引き込むために工事業者が訪問したり、壁に穴を開けるなどの工事が必要になることが多いものです。
工事が必要ということは、その分開通までに時間を要することになり、申し込んでも数週間程度インターネットが利用できない期間が発生してしまいます。
また、固定回線は回線工事にかかる費用がかかってしまいますが、置くだけWiFiの場合は工事費用も不要ですぐに利用することができます。
2.高速なインターネット回線
モバイル回線といえば通信速度が遅いイメージを持たれがちですが、近年では固定回線に匹敵するほどの十分な速度を実現しています。
たとえば、モバイルWiFiの代表的なサービスであるWiMAXの場合、下り最大440Mbpsという速度を誇り、ネットサーフィンはもちろんのこと、動画や音楽ストリーミングサービス、SNSなども快適に利用できます。
3.面倒な引っ越し手続きが不要
回線設置工事が不要というポイントにも共通する部分ですが、置くだけWiFiは携帯電話の通信が可能な場所であれば利用できるため、引っ越し手続きや転居先での工事なども一切必要ありません。
携帯電話と同じ感覚で、置くだけWiFiのルーターさえあればその場で利用できます。
4.旅行先でも使える
引っ越しが簡単であるということは、旅行や出張での滞在先でも利用できるメリットがあります。家族や友人、知人との旅行であっても、滞在先に置くだけWiFiを設置することでインターネット回線をシェアして利用することもできます。
5. 料金が安い
回線工事も不要で便利に使えるということは、その分料金も高いのではないかと懸念する人も多いですが、置くだけWiFiは固定回線と比べても同等もしくは安く利用できます。
提供事業者や料金プランによっても変わってきますが、少なくとも固定回線よりも大幅に高額な請求となるリスクはないため安心です。
6. バッテリー切れの心配がない
置くだけWiFiは通常のモバイルWiFiと異なり、バッテリーによる駆動ではなくコンセントから直接給電する仕組みを採用しています。そのため、バッテリーが途中で切れて無くなってしまうリスクがありません。
置くだけWiFiのデメリット
メリットの多い置くだけWiFiですが、反対にデメリットとして考えられることはないのでしょうか。今回は3つのポイントを挙げてみます。
ポイント
- 手軽に持ち運びができない
- 速度制限が発生する可能性がある
- 事業者によっては回線が不安定
1.手軽に持ち運びができない
当然のことではありますが、モバイルWiFiのように持ち運びを想定しているものではありません。
あくまでも自宅内のみで利用することが前提となっているため、屋外で利用するのであれば置くだけWiFiではなく、通常のモバイルWiFiを選択する必要があります。
2.速度制限が発生する可能性がある
契約する通信事業者によっても多少の違いはありますが、置くだけWiFiは固定回線と異なり、通信容量によって速度制限がかかることがあります。
典型的なパターンとしては、「通信容量無制限」と謳ってはいるものの、3日間で10GB以上の通信をした場合に制限が翌日制限の対象となってしまうというもの。
また、それらの制限がなかったとしても、通信事業者で独自に判断して通信を最適化した結果、速度が大幅に制限されることもあります。
3.事業者によっては回線が不安定
置くだけWiFiはWiMAXやソフトバンクなど、さまざまな事業者が提供しています。当然のことながら、事業者によっては提供エリア、回線混雑度やユーザー数も異なるため、それに応じて回線の安定性も変わってきます。
また、安定性という面においては置くだけWiFiよりも固定回線のほうに軍配が上がってしまいます。
置くだけWiFiがあるau、ソフトバンク、WiMAXの違い
置くだけWiFiを提供しているのは次の3つです。
- WiMAX
- SoftBank Air
- auスマートポート
それぞれの特徴を、次の比較表にまとめました。
WiMAX | SoftBankAir | auスマートポート | |
---|---|---|---|
月額料金の安さ | 〇 | 〇 | × |
契約期間 | 3年 | 3年 | 2年 |
通信速度 | 〇 | △ | 〇 |
対応エリア | 〇 | × | 〇 |
4G LTE回線 | 〇 | 〇 | 〇 |
WiMAX回線 | 〇 | × | 〇 |
データ通信量 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
比較してみると、それぞれの特徴が見えてきます。
まず、料金で比較してみるとWiMAX、SoftBank Airの安さが際立ちますが、SoftBank Airの場合はWiMAXが利用できないことと通信速度も低下しがちのため使いやすさの点ではWiMAXに軍配が上がります。
auスマートポートはWiMAXと同じエリアやスピードをもっていますが、料金が高めに設定されているため、こちらもWiMAXに軍配が上がると言って良いでしょう。
3社の置くだけWiFiをトータルで見ると、WiMAXがおすすめであることが分かります。
4G LTE回線って?
WiMAX回線のほかに4G LTE回線というものがあります。これは一般的に使用されている携帯電話用の電波であり、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクはいずれも4G LTE回線によってサービスを提供しています。
対応エリアは通信事業者によっても異なりますが、特に山間部や沿岸部なども幅広くカバーしています。WiMAXの電波が入らない場所であっても、大手通信3社が提供する4G LTEであればカバーされていることも多いです。
ただし、SoftBank Airの場合は接続スピードもエリアの広さもソフトバンクのスマートフォンとは多少異なります。現在使用しているスマートフォンの接続品質が担保できるとは限らないため注意が必要です。
auスマートポートとWiMAXは料金のみ異なる
auスマートポートとWiMAXは4G LTE、WiMAXともに利用することができるため、通信品質としては同じです。
ただし、サービスを提供している会社が異なるため料金プランに違いがあります。言い方を変えれば、auスマートポートとWiMAXとの違いは料金プランのみであるということです。
ドコモの置くだけWiFiは法人企業のみ契約可能
ドコモが提供している置くだけWiFiは、WiMAXやソフトバンク、KDDIが提供しているサービスとは異なり、法人ユーザーのみに提供しているサービスです。そのため、個人がドコモの置くだけWiFiを契約することはできないため注意が必要です。
置くだけWiFiの月額料金を比較
WiMAX | SoftBankAir | auスマート ポート | |
---|---|---|---|
月額料金 | 3,480円 ※GMOとくとくBB月額割引 |
12ヶ月間 3,800円 13ヶ月目以降 4,880円 |
4,380円 ※WiMAX2+おトク割 適用 |
大前提として、WiMAXは契約プロバイダによっても料金プランが大きく異なります。なかにはキャッシュバックキャンペーンを適用することによって他の2社とほぼ変わらない金額になることもあるほか、上記のように大幅に安い月額料金で利用することもできます。
また、ソフトバンクの場合はソフトバンクのスマホとセットで利用することによってトータルの料金が安くなったり、auスマートポートもauスマートバリュー適用によってWiMAXと同等の金額まで割引することも可能です。
料金プランの基本的な選び方としては、現在利用しているスマホの通信事業者が提供している置くだけWiFiを検討し、WiMAXと比べてどの程度料金に差が生じるのか確認してみるのがおすすめです。
置くだけWiFiの通信エリアを比較
WiMAXの対象エリア
WiMAXは都心部であればほぼ全域をカバーしており、一般的な住宅街や市街地で利用する分には不便さを感じることはないでしょう。
ただし、WiMAXは24GHz帯および5GHz帯という高い周波数の電波を使用していることもあり、建物の中に入ると電波が届きにくくなる特性もあります。
WiMAXの詳細なエリアは以下リンクから確認できるため、事前にチェックしておきましょう。
ソフトバンクエアーの対象エリア
SoftBank AirはWiMAXに比べてエリアの広さが狭いことが分かります。据え置き型という特性上、持ち運ぶことを想定していないため市街地や住宅街など人口が集中しているエリアを中心に整備していることが分かります。
比較結果
上記のエリアマップでの比較からも分かるように、WiMAXは持ち運びを前提にしている一方で、SoftBankAirは自宅内のみ固定で利用する違いから、提供エリアに大きな差があることが分かります。エリアマップ上での範囲が広いからといって単純に比較できるものではありませんが、引っ越しが多い方などにとってはサービスエリアが広いに越したことはないのも事実といえるでしょう。
置くだけWiFiの通信速度を比較
WiMAX | SoftBankAir | |
---|---|---|
下り最大速度 | 最大1.2Gbps | 最大481Mbps |
上り最大速度 | 最大75Mbps | 非公表 |
通信制限 | 無制限 | 無制限 |
WiMAXとSoftBank Airはともに通信制限が無制限となっていますが、WiMAXの場合は3日間で10GBを超過した場合に翌日の夜間に制限の対象となることがあります。
また、SoftBank Airについても明確な基準は設けられていないものの、夜間など集中する時間帯においては必要に応じて速度制限が講じられる可能性があることが公表されています。
WiMAXの置くだけWiFiがおすすめな人
- 月額料金を安く抑えたい人
- スピード・エリアともに妥協したくない人
- 速度制限を気にすることなく利用したい人
WiMAXはプロバイダによって料金を抑えることができるほか、スピード・エリアの広さともにバランスのとれたサービスといえるでしょう。
3日間で10GBの制限基準があるとはいえ、数ある通信サービスのなかでもコストパフォーマンスは高いです。サービスエリアに問題がなく、3社のなかで迷ったらWiMAXを選ぶのが無難であるともいえます。
キャッシュバック特典や割引サービスなどWiMAXプロバイダによっても提供条件は異なるため、WiMAXのプロバイダ選びに迷ったら以下の記事も参考にしてみてください。
ソフトバンクエアーがおすすめな人
- ソフトバンクのスマートフォンを利用している人
- WiMAXがエリア外かつSoftBank Airが提供エリア内の人
SoftBank Airはソフトバンクのスマートフォンを利用している人であればメリットの大きいサービスといえるでしょう。スマートフォンとセットで利用することによってSoftBank Airの割引も適用され、トータルコストは下げることが可能です。
一点注意しなければならないのは、これまでも紹介してきた通りソフトバンクのスマートフォンとは提供エリアが異なる点です。現在スマートフォンが高速で利用できているとしても、SoftBank Airも同様の条件で利用できるとは限らないため注意が必要です。
auの置くだけWiFiがおすすめな人
- auのスマートフォンを利用している人
- auと請求先をまとめたい人
auスマートポートはWiMAXとほぼ同様のサービスであるため、大きなメリットを挙げるとすれば請求先の一本化があります。auのスマートフォンを利用しており、なおかつ置くだけWiFiの料金も一本化したい人にとってはおすすめです。
auの既存ユーザー以外の場合、料金は他社に比べて高い傾向にあるため、メリットは決して大きくはないといえるでしょう。
置くだけWiFiをおすすめしたい人
ここまで紹介してきた置くだけWiFiのメリットやデメリットを参考に、置くだけWiFiをおすすめできるのはどのような人なのか、いくつか例を出して紹介していきます。
ポイント
- 自宅専用のインターネット回線を検討している人
- 転勤などで引っ越しが多い人
- 料金を安く抑えたい人
1.自宅専用のインターネット回線を検討している人
宅内用のインターネット環境を手軽に構築したい人にとって、置くだけWiFiは最適なサービスといえます。
自宅内にルーターを設置するだけで手軽にインターネット環境が完成する置くだけWiFiは、一人暮らしや単身赴任世帯にも最適ではないでしょうか。
2.転勤などで引っ越しが多い人
会社や職種によっては数年単位で引っ越しを繰り返す人も多いのではないでしょうか。転勤のたびにインターネット回線の手続きをすることは決して簡単ではありません。
置くだけWiFiであれば、面倒な引越し手続きをしなくても、引っ越したその日からインターネットが利用できます。
3.料金を安く抑えたい人
固定のインターネット回線の場合、アパートの世帯数などによって料金も異なります。
世帯数が少ない建物だと、料金も高くなる傾向がありますが、置くだけWiFiであればアパートやマンション、一戸建てといった建物の規模に関係なく安い料金で利用できます。
置くだけWiFiをおすすめできない人
反対に、置くだけWiFiの利用がおすすめできないのはどのような人なのでしょうか。こちらも3つのパターンに絞ってみました。
ポイント
- 自宅以外でもインターネットを利用したい人
- 安定した回線を利用したい人
- 速度制限を気にすることなく利用したい人
1. 自宅以外でもインターネットを利用したい人
スマートフォンの通信容量を節約したり、屋外でパソコンを持ち歩いて利用することが多い人の場合は、置くだけWiFiではなくモバイルWiFiの利用がおすすめです。
特に出張や旅行に行く機会が多く、場所を選ばずインターネットを利用したい人にとっては、スマートフォンのような小型のモバイルWiFiのほうが重宝するでしょう。
2. 安定した回線を利用したい人
回線そのものの安定性という面で考えた場合、置くだけWiFiよりも固定回線でのインターネット環境のほうがおすすめです。
固定回線はユーザー数や混雑具合によって全く影響を受けないというものではありませんが、置くだけWiFiに比べると比較的安定している傾向にあります。
3. 速度制限を気にすることなく利用したい人
モバイルWiFiや置くだけWiFiなどを選ぶ際にもっとも懸念する人が多いのが、やはり速度制限ではないでしょうか。
1ヶ月あたりの通信容量が無制限の場合であっても、3日で10GBの制限が設けられているケースは多いため、ダウンロードや動画サービスを頻繁に利用する人の場合は固定回線でのインターネット環境のほうがおすすめです。
固定回線から置くだけWiFiへの乗り換えを検討してみよう
固定回線に比べると置くだけWiFiは速度制限や安定性という面で多少劣るポイントはあるものの、トータルで考えたときに実用性は高いサービスといえます。
転勤や引っ越しが多い人や一人暮らしの人など、固定回線の代わりに置くだけWiFiを検討してみるのもおすすめです。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。